新潟医療福祉大学健康科学部健康スポーツ学科の佐藤茉由さん(2023年度卒業)、佐々木美悠さん(2023年度卒業)、同大学の越智元太講師および群馬大学共同教育学部の島孟留准教授らの研究グループは、毛髪中のストレスホルモンが長期トレーニングにより受けた身体的負荷量変化と関連することを明らかにした。
アスリートのオーバートレーニング予防には、身体的負荷量の評価が重要だが、従来、こうした評価は選手やコーチの主観や経験則によって行われてきた。
本研究では、アスリートの身体的負荷量の客観的な評価法となりうる、毛髪コルチゾールとトレーニング負荷量との関連性を見出した。ストレスを感じた際に分泌されるストレスホルモンとして知られるコルチゾールは、毛髪中に蓄積される。そこで、女子大学サッカー選手28名を対象として、チームが所属するリーグ戦前半が終わりオフ期に入った8月と、全日本大学選手権大会直前の12月にそれぞれ採取した毛髪(根本から1cm程度)中のコルチゾール濃度を分析した。その結果、選手らの自己申告による1か月間に受けたトレーニング負荷量と、毛髪中コルチゾール濃度との間に、有意な正の相関を認めたという。
この結果から、毛髪中コルチゾールはトレーニングにより受けた身体的負荷量変化を反映する可能性があるとしており、毛髪中コルチゾールを測定することで、これまで主観的評価しか行われなかったアスリートのトレーニングによる身体的負荷量を、非侵襲的かつ生理的に評価できる可能性が明らかとなった。
トレーニング負荷に関する従来の主観的評価に加えて、本研究が見出した毛髪中コルチゾールによる客観的評価を加えることで、アスリートのパフォーマンス向上に向けたトレーニング計画の立案や、安心安全なスポーツ活動の実現に寄与することが期待される。