富山大学の研究グループは、地殻活動に伴う電磁気現象を安定的に観測する手法を開発した。
地震活動や地殻活動により地中の岩盤に強い力が作用すると、岩石を構成する元素の状態がわずかに変化して電気を帯びた粒子などが生じ、これが地中や地表面を伝って移動することによって電磁気的な現象が発生すると考えられている。しかし、こうした自然現象に伴う信号は非常に微弱かつ不規則であり、観測の再現性が乏しいことが課題である。
本研究では、低雑音かつ高感度な観測装置を開発し、高周波の電波を観測することにより、地殻活動に伴う電磁気現象を安定的に観測する手法を確立した。約10年間にわたる長期観測から、地震前兆時等に地表面に電荷が出現すると、電磁波が影響を受け、通常ありえない地点まで長距離伝搬するなど異常な伝搬をする可能性を確認したとしている。
また、スーパーコンピューターを用いたシミュレーションにより、この異常現象が、山岳や海岸の複雑な地形の表層に静電気のような電荷が出現した場合に、電波が強く散乱されて生じるという物理的な発現メカニズムも解明した。実際に、2022年3月16日に発生した福島県沖地震(M7.4)では、地震発生の約半日前から顕著な異常現象を観測したという。
現在、本研究で検出した多くの地震に関する同様の異常信号と、気象庁地震データベースとの整合性を確認中だとしており、機械学習を用いた信号解析により、観測データと日本における地震活動の関連性の推定を進めている。今後は、観測データをより多く蓄積することにより、地震活動の前後における異常信号をより詳細に調査・探究し、不規則な自然現象である地震の予測につなげることを目指す。