長崎大学大学院の研究グループは、ニホンウナギの稚魚が捕食魚に丸のみされた後に、その胃の中から消化管内をさかのぼってエラの隙間から脱出することを明らかにした。

 ニホンウナギは重要な水産資源だが、絶滅危惧種に指定されるなど、資源量は著しく減少している。研究グループはこれまでの研究により、ニホンウナギ稚魚が捕食魚のドンコに捕獲された後に、そのエラの隙間を通って脱出できることを明らかにしていた。しかし、その脱出経路・行動特性は不明だった。

 そこで研究グループは2022年より、造影剤である硫酸バリウム水溶液をウナギに注入し、X線映像撮影装置内でドンコにウナギを捕獲させ、ウナギの脱出行動を観察する研究を開始した。

 実験開始当初、研究グループは、ウナギが捕食魚の口内からエラの隙間に向かって脱出すると推測していた。しかし実は、得られたX線映像から、ウナギはドンコに飲み込まれ、体の一部が胃まで達した後に、ドンコの消化管内を食道、エラへとたどって脱出(32匹中9匹)していることが分かった。

 ウナギの体全体がドンコの胃の中に完全に飲み込まれた際には、脱出可能な経路を探るように胃の中でぐるぐると回転する行動がみられた(11匹で観察、5匹が食道への尾部差し込みに移行)。脱出に失敗したウナギは、ドンコの消化管内で徐々に弱っていき、平均200秒ほどで完全に動きがみられなくなった。

 研究グループは今回、ウナギが捕食魚の消化管内から脱出する様子(経路や行動特性)の撮影に成功した。獲物にバリウムを注入し、X線映像撮影によって、捕食者体内における獲物の行動を観察する独自の手法は、他の生物種の行動観察にも応用可能としている。

論文情報:【Current Biology】How Japanese eels escape from the stomach of a predatory fish

大学ジャーナルオンライン編集部

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