大阪公立大学大学院の王 暁鋭大学院生(博士後期課程2年)、松下大輔教授らの研究グループは、大阪市内の不動産物件データセットに、街路景観データと、それに対する印象評価などの情報を加えた結果、約74%の正しい家賃推定を実現した。
不動産価値は、築年数や面積、設備、立地(最寄り駅までの距離)などと相関があり、一般にこれらの構成要素による手法(ヘドニック価格モデル:HPM)で推定される。しかし住宅を選ぶ際は、近隣の景観や雰囲気などの視覚的、心理的要素も決め手となり得る。そこで、従来のHPM手法に画像認識技術を導入し、近隣景観の物理的特性や心理的印象を加味することで、より現実的で精度の高い家賃推定の可能性を検討した。
研究グループは、大阪市内で流通している賃貸住宅の家賃や仕様からなる不動産物件データセットに加え、Googleストリートビューの街路景観画像データセット、景観画像の空や植栽、歩道といった構成要素を認識する画像認識技術、景観画像に対する印象評価を行う機械学習モデル(PlacePulse)を用いて、家賃推定を行う拡張HPMモデルを導出した。これにより家賃データセットの約74%を正しく推定でき、近隣景観は築年数、都心からの距離、床面積に次ぐ重要な指標であることが分かった。
不動産物件の査定として、大規模データセットの機械学習により近隣環境要素を反映させた拡張HPMは、従来のHPMより説明力が高く、根拠に基づいた価格推定が可能だ。今後は、景観の印象評価に脳波計測のような客観性の高い手法を組み合わせた展開も考えられるとしている。