筑波大学医学医療系の山田洋准教授らの研究グループは、「乾き物を食べると喉が渇くかどうか」を定量的に測定することに成功した。
おかきやクッキーなど水分が少ない食べ物を食べると喉が渇き、カズノコのように塩分の多い食べ物を摂取した場合も喉が渇く。このような喉の渇きや空腹は、脳が生み出す主観的な感覚であるが、私たちの感じた通りに体の中で喉の渇きや空腹は起こっているのだろうか。
今回、本研究では、乾き物を食べた際に起こる体の中の生理的な変化を測定することで、喉の渇きを数値化する手法を開発した。喉の渇きの感覚は、血液の浸透圧と良く相関することが知られている。また、空腹度合いは、胃から分泌されるホルモンであるグレリンが良く反映することが知られている。そこで、飲食の調節が可能でヒトに最も近い実験動物のマカクザル(ニホンザルとアカゲザル)を用いて、乾いたクラッカー(乾パンのような固形飼料)を食べる前後の血中の浸透圧とグレリンの変化を測定した。
その結果、血液の浸透圧は、4頭中全てのサルでクラッカーを食べた後に上昇し、喉の渇きを反映することが確認された。また、グレリンは4頭中3頭のサルでクラッカーを食べた後に低下し、お腹の膨れ具合を反映していた。これらの指標は、サルの飲水量や給餌量と良く一致した変化を示したため、喉の渇きと空腹の度合いの変化を浸透圧やグレリンの測定で数値化できることが示されたとしている。
本研究成果は、健康の維持のみならず、喉の渇きや空腹などの欲求の異常に関わる疾病(うつ病、多飲症、過食症など)の評価にも用いられることが期待される。