東京科学大学大学院の那波伸敏准教授らの研究チームは、2011年から2022年に収集された5歳以下の子どもの腸重積症による全国規模の入院データと、気象庁の気温データを解析し、暑さが子どもの腸重積症リスクを増加させる可能性を明らかにした。
腸重積症は子どもの腹部救急疾患の中で最も一般的な原因のひとつ。診断や治療の遅れは深刻な結果を招くことがあり、リスク要因の解明は重要だ。従来の研究は、主に月・週ごとの分析に依存し、長期的な傾向や季節性などの潜在的な交絡因子が考慮されないことが多く、日ごとの気温と子どもの腸重積症の関連性を全国規模の大規模データで検討した研究はなかった。
研究では、全国の対象病院から収集された入院患者に関する大規模データベース(DPC)から抽出した12年間(2011~2022年)・約1万症例のデータを用いて、年間で最も気温の高い5ヵ月間(5~9月)の子ども(5歳以下)の腸重積症入院データと気象庁の気温のデータを分析した。
その結果、暑さによって子どもの腸重積症リスクが増加することが確認された。特に、99パーセンタイルにあたる極めて高い日平均気温(1日の平均気温が上位1%に該当する30.7℃)にさらされると、入院リスクが39%増加することが明らかになった。
今後、気候変動によって暑い日がより頻繁に発生するにつれ、腸重積症の患者数が増加する可能性があり、公衆衛生の観点からも気候変動への対策の重要が示されている。また、高気温と腸重積症の関連をより深く理解するため、食事内容や腸管運動の変化などのメカニズムを詳細に検討することが求められるとしている。