東京科学大学の中島淳一教授は、東京湾北部(千葉県北西部)の深さ60~70 kmにある「地震の巣」が太平洋プレートと一緒に沈み込む「海山」によって引き起こされていることを明らかにした。
東京湾北部は日本列島で最も地震活動が活発な地域の1つで、非有感地震を含めると約100個/月の地震が発生している。有感地震も多く、数年に1回はマグニチュード(M)5以上の地震が発生している。しかし、東京湾北部の地震の巣(周囲の活動から孤立した定常的な地震活動域)に関する研究はほとんどなく、発生原因の理解は進んでいなかった。
今回の研究では、2000年から2023年までに東京湾北部の地震の巣で発生したM2以上の地震(深さ55~75 km)の高精度震源決定や断層タイプの推定などを行い、地震活動の時空間変化の特徴を精査した。
その結果、この地震の巣の大きさが関東地方の沖合にある海山(海底から1000 m以上の高所部)とほぼ一致すること、地震活動の空間パターンが海山の沈み込みから期待される特徴と矛盾しないことなどから、海山の沈み込みが地震の巣の原因であるという新しいモデルを提案した。また、東京湾北部の地震の巣が、首都直下地震として想定されているM7クラスの地震の震源域になる可能性も指摘した。
関東地方の地震活動は、太平洋プレートとフィリピン海プレートの2枚の海洋プレートの沈み込みが原因とされ、また、多くの研究で海山の沈み込みは地震の発生を抑制すると考えられてきた。今回示した海山の沈み込みが地震の原因であるというモデルは、プレート境界型地震の発生メカニズムの理解の進展に寄与する重要な研究成果だとしている。
論文情報:【Tectonophysics】The Tokyo Bay earthquake nest, Japan: Implications for a subducted seamount