金沢大学の中野正浩准教授らの研究グループは、株式会社麗光、カナダ・クイーンズ大学と共同で、すべて有機材料で構成されたフィルム型太陽電池において従来の2倍以上の性能を実現することに成功した。
現在の太陽光パネルは有害な金属材料などを使用し、廃棄処理にコストがかかるため、そのような材料を含まない「全有機太陽電池」が注目されている。しかし、これまでの全有機太陽電池の光を電気に変換する効率(光電変換効率)は約4%で、従来のシリコン型太陽電池の効率(27%以上)と比べて大幅に劣っていた。
全有機太陽電池の光電変換効率が低い主な原因は二つあった。一つ目は、十分な導電性を持つ有機透明電極材料で、フィルム型太陽電池に適用可能な材料が限られていること。研究では、導電性高分子(PEDOT:PSS)をベースとし、基板を損傷させる酸や塩基を使用せず低温(80℃)で作製可能であり、太陽電池の電極として十分な導電性を示す透明電極を開発した。
二つ目は、多層膜で構成される太陽電池デバイスを作製する際に、下層や基板を損傷させずに膜を積み重ねることが難しいこと。そこで研究グループは金沢大学開発の「カーボンナノチューブ電極のラミネーション法」を活用した。太陽電池の封止材(保護膜)上に別個に電極を形成し、それを貼り付けて電極を作製した。これにより、下層有機材料の損傷を防ぐことができた。
これらの課題解決により、世界最高性能を持つ全有機太陽電池の開発に成功した。全有機太陽電池は従来の太陽電池と違い、単純な焼却によって処分可能で有害物も含まない。そのため農地や水源地、人体との接触が多い場所や場面での活用が考えられるという。