長崎大学の研究グループは、AI技術を活用して、独自の細胞小器官(オルガネラ)画像解析技術OrgaMeasを開発した。
オルガネラは、細胞内に存在するさまざまな機能単位であり、DNAを格納している核、エネルギーを産生するミトコンドリア、不要な物質や損傷した構造体を分解するリソソームなどがその代表である。
一般的なオルガネラの状態解析には、顕微鏡で撮影した画像データを用いるが、これには手作業で行う過程が多いため、膨大な時間を要すること、客観性を確保しにくいことなどが問題視されてきた。長崎大学大学院博士後期課程3年(当時)の馬場大暉さんも、オルガネラ研究者としてこれらの問題に直面したことで、オルガネラの顕微鏡画像を正確かつ効率的に分析するための新しい画像解析技術の必要性に気づき、研究を主導したという。
本研究で開発したOrgaMeasは、画像内の細胞の領域を自動検出するDIC2Cellsと、画像内のオルガネラの領域を自動検出するOrgaSegNetからなる。
まず、これまで手作業で行われていた、解析したい細胞領域(ROI:Region of interest)の設定を自動化したのがDIC2Cellsである。生きた細胞を可視化するライブセルイメージング技術において、細胞の微分干渉像を取得し、ここから、高精度で客観的なROI設定の自動化を実現した。
さらに、画像内のオルガネラ領域の定義(セグメンテーション)を自動化するため、他の研究グループによって開発されていたミトコンドリア画像のセグメンテーションに特化したツールMitoSegNetを改良した。これにより、ミトコンドリアだけでなく他のオルガネラをも高精度かつ客観的にセグメンテーションできる新たなツールOrgaSegNetを実現した。
これまでは6時間以上かかっていた約200個の細胞を対象としたミトコンドリア解析が、DIC2CellsとOrgaMeasをシームレスに統合したOrgaMeasを用いると、1時間以内で完了できるようになったという。
本技術は、高精度かつ効率的なオルガネラ解析を可能とし、オルガネラの機能不全に基づく疾患に対する治療薬の開発などにも貢献すると期待される。