横浜国立大学の小林勇太博士課程学生らの研究グループが、いまだに認識されていない生物多様性ホットスポットを特定した。認定につながることで、世界中のまだ救える自然の保全活動の促進が期待される。
生物多様性ホットスポットとは、原生的な自然の7割以上が破壊されているが、1500種以上の固有植物種が生息している地域とされ、国際NGOやNPOが積極的な保全活動を実施している。現在、世界で36カ所が生物多様性ホットスポットに認定され、日本もその一つ。今回の研究は、生物多様性ホットスポットが過度に自然を破壊されながら、多くの固有種の棲み家として機能している理由の解明を目的としたという。
研究では、生物多様性ホットスポットでの自然破壊と、生態系が破壊される以前に1500種以上の固有植物が生育していたとされる地域を選定して比較し、過去500年間の土地利用の歴史を検証した。その結果、生物多様性ホットスポットでは、土地利用改変が比較的ゆっくりと行われてきたことが分かった。土地利用の進展速度を軽減すれば、生物多様性損失の緩和が可能としている。
一部の比較対象地域は、土地改変が比較的遅いため生物多様性ホットスポットの基準を満たす可能性が極めて高いと推測された。研究ではモンゴル・ロシア・中国にある3つの地域(アルタイ・サヤン山地林、アムール川流域、中国東南部の亜熱帯林)を生物多様性ホットスポットの候補地として提案した。
生物多様性ホットスポットは地球の救急救命室(ER)とも呼ばれている。今回の研究成果により、遅れが指摘されている極東地域の生態学研究が促進され、新たな生物多様性ホットスポットの認定実現が期待される。