地方自治体が進める小児医療費自己負担分の全額助成が健康状態の良い子どもたちの薬剤費を増加させ、医療費全体を増やしていることを、東京大学大学院医学系研究科の宮脇敦士特任研究員、小林廉毅教授らが突き止めた。宮脇研究員らは医療費助成に一定の自己負担を設けることで医療費全体の増加を抑制できるとみている。
宮脇研究員らは西日本の県で2013年4月に小学校1~5年生だった8,581人の国民健康保険レセプトデータを用い、2013年4月から2017年1月までの医療費を調査した。この県では期間中、
・外来入院医療費の月当たり自己負担額が上限を超すと、超過分を全額助成する
・受診回数にかかわらず、薬剤費を全額助成する
-という2つの小児医療費助成が実施されており、その影響を解析した。
それによると、医療費助成は外来入院医療費に対して統計学的に有意な影響を与えていなかったが、薬剤費を16%増加させていた。統計学的に有意な変化と認められた要因では、1回の受診当たりの外来医療費が7%減少したほか、月当たりの処方確率が7%増加、ジェネリック薬品のシェアが5%減少していた。
次に対象となった子どもを健康状態の良し悪しで2群に分けて解析したところ、医療費助成に伴う薬剤費の増加が健康状態の良い群だけで見られた。
宮脇研究員らは薬剤費の助成が比較的健康状態の良い子どもに手厚い形になっていたことなどから、医療サービスを受ける機会が少ない層への助成が薬剤費の増加を引き起こしたとし、医療サービスをより必要とする子どもに選択的な助成をすることで医療費全体の増加を抑制できるとみている。