千葉大学大学院の劉浩教授とJiaxin Rong特任研究員(研究当時)らの研究グループは、三井化学株式会社と共同で、フクロウの翼を模倣したドローンのプロペラを開発し、騒音低減効果を実証した。
フクロウは極めて静かに飛ぶ。翼の中の羽根の前縁に鋸歯状の突起があり、これが渦状の空気の流れを分断し、不安定な気流を抑制して騒音を低減する。獲物に気づかれずに近づけるのだ。一方、「ドローン」として知られるマルチローター無人航空機(UAV)は様々な分野で普及しているが、プロペラから発生する大音量の騒音は人口密集地で使用する場合の課題となっていた。
そこで、研究グループは、フクロウの静音飛行を実現している羽根の鋸歯形状を調べ、その構造をUAVのプロペラ用に複数のパターンでモデル化(鋸歯の大きさが異なるSER3、SER6、SER9の3モデル)し騒音低減効果を検証した。
この結果、SER6で最大3dBの騒音低減を達成しながら、空力性能をFM値で4~8%の軽微な低下に留めることができた。また、前縁部の鋸歯形状の最適化は、振幅や幅(波長)などの幾何学的パラメータに強く依存するが、幅と振幅が各6mmで間隔が8mmの中程度のSER6で、騒音低減と空気力学的効率のバランスが最も良いことが分かった。
通常、プロペラの形状変更による騒音低減は推力や効率を低下させる。今回この両立が難しい「トレードオフ」の関係の最適化には鋸歯の寸法が重要であることが示された。
使用したプロペラのモデルは直径72cm以上で、大型ドローンや空飛ぶ車にも実装可能なサイズ。重量の大きな機体のプロペラに適用することで、都市部における航空物流や交通分野での応用が期待できるとしている。