畿央大学大学院の信迫悟志教授らの研究チームは、運動イメージ(MI)能力が6〜7歳児ではまだ十分に発達しておらず、年齢とともにその能力が向上することを、2種類のMI課題を用いて明らかにした。
運動イメージ(MI)とは、身体を動かさずに頭の中で運動を想像する動的な認知プロセス。MIは意図形成、運動の計画、運動プログラムの構築について、実際の身体運動と機能的に同等とみられる。MIの使用は成人での発達は十分だが、小児での発達過程は明らかではなかった。
研究では6〜13歳児50名を対象に、手のMI想起の正確性を評価するため、2つのMI課題を実施。1つ目は手の左右識別(HLR)課題で、モニター上の多様な手の画像が左手か右手かをMIを用いて判断するもの。2つ目は両手結合(BC)課題で、①利き手の描画、②利き手と非利き手での異なる描画、③頭の中で②の行為をイメージすることだ。微細運動技能も測定しMIとの関連性も検討した。
その結果、6〜7歳児では、両課題でMI使用の証拠が明確ではなかった。しかし、HLR課題では、年齢が上がるにつれて正反応時間(RT)の短縮と正答率の向上が示され、MI能力の発達的向上を認めた。一方、BC課題では、6〜13歳の間でICE※に明確な年齢差は見られず、年齢とICEとの間の相関関係も示されなかった。また、どちらのMI能力も微細運動技能と有意に関連していた。
これにより、MI能力単体の評価にはHLR課題が適しており、BC課題は複合的な認知−運動機能の発達過程を捉えるのに適した課題としている。今後、神経発達症児にMI課題を応用することで、運動障害の特性理解や介入効果の評価、リハビリテーションや運動学習支援への応用が期待されるとしている。
※イメージ干渉効果、片手で線を描きながら他方の手の円描きをイメージすることで線が歪む効果