富山大学エコチル調査富山ユニットセンターのグループは、妊娠前のBMI(Body Mass Index:体格指数)および妊娠中の体重増加量が、いずれも出産後6か月までの母乳栄養継続と関連することを、「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」のデータから明らかにした。

 完全母乳栄養(exclusive breast feeding:EBF)で育った子どもはそうでない子どもと比べて、感染症の罹患率や死亡率が低いことが知られている。また、母親においても、EBFは卵巣がんや乳がん、2型糖尿病の発症率低下と関連することが示されている。このため、世界保健機関は、出産後6か月までの母乳育児を推奨している。

 一方、日本産科婦人科学会は、妊娠中および出産時の有害事象を減らすことを目的に、「妊娠中の体重増加指導の目安」において、妊娠前のBMI別に推奨される妊娠中の体重増加量を公表しているが、これらが母乳栄養の継続とどのように関連するかについては明らかではなかった。

 そこで今回、エコチル調査から82,129人の母親のデータを用いて、妊娠前BMI別(日本肥満学会が基準とする「低体重」、「普通体重」、「肥満1度」)の妊娠中体重増加量(日本産科婦人科学会のガイドラインに基づく「不十分」、「適正」、「過剰」)と母乳栄養継続(「EBF:6か月間完全母乳栄養を継続」、「Non-EBF type-Ⅰ:6か月間混合栄養を継続」、「Non-EBF type-Ⅱ: 6か月間母乳栄養を継続しなかった」)との関連を検討した。なお、肥満2度以上は今回の解析から除外した。

 その結果、妊娠前低体重(BMI18.5未満)および普通体重(BMI18.5~25.0未満)の女性において、妊娠中体重増加量が不十分(12kg未満および10kg未満)または過剰(15.1kg以上および13.1kg以上)だと、Non-EBF type-Ⅱとなりやすいことがわかった。また、妊娠前肥満1度の女性は、妊娠中体重増加量に関わらず、Non-EBF type-ⅠおよびⅡとなるリスクが高いことがわかった。

 これらの結果から、母乳栄養継続の観点では、低体重または普通体重の女性は妊娠中体重増加量を適正にすること、肥満女性は妊娠前に普通体重まで減量することが重要と考えられる。母乳栄養の推進において、妊娠中の適正な体重増加や妊娠前の肥満予防に向けた取り組みが推奨されるとしている。

論文情報:【BMC Pregnancy and Childbirth】Association of pre-pregnancy body mass index and gestational weight gain with continued breastfeeding until 6 months postpartum in Japanese women: the Japan Environment and Children’s Study

大学ジャーナルオンライン編集部

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