東北大学の松平泉助教らの研究グループは、ヒトの脳に「父親に似る部分」「母親に似る部分」「両親に似る部分」「父親にも母親にも似ない部分」があることを発見した。日本人の父・母・子(親子トリオ)の脳画像解析による世界初の成果だ。
親子の顔や性格が「似ている」と気づくことはよくあるが、実は脳の「かたち」も、他人同士の中から親子を識別できるほどによく似ることが分かっている。ただし、これまでの研究では主に母親と子に焦点が当てられ、父親を含めた検討は十分に行われていなかった。
研究グループは、父・母・子からなる「親子トリオ」を対象とした脳科学研究プロジェクト『家族の脳科学』を2020年より進めてきた。今回、その参加者のうち高校生以上の子と父母で構成されるトリオ152組のデータを分析。脳MRI画像からは、大脳皮質の厚み(皮質厚)、表面積、脳回指数、皮質下構造の体積といった4種類の「かたち」の情報(特徴量)を算出した。
その結果、子の脳には「父親にのみ似る領域」「母親にのみ似る領域」「両親に似る領域」「どちらにも似ない領域」が存在することが明らかになった。さらに、これらのパターンは子どもの性別や特徴量の種類によって異なることも確認された。
つまり、親子の脳の類似性は、「父と娘」「母と息子」など、親子の性別の組合せによって異なると言える。今後は、「なぜ親子で脳が似るのか」「なぜ性別が関与するのか」「脳が似ていることは性格が似ていることとどう関係するか」などの課題に取り組む予定。また、今回の成果を手がかりとして、抑うつなどの心の不調が世代間で伝播する仕組みの理解が進むことも期待されるとしている。