群馬大学大学院医学系研究科の下川周子助教と国立感染症研究所の久枝一部長らの研究グループは、高脂肪食を与えてあらかじめ太らせたマウスに寄生虫を感染させると、体重の増加が抑えられることを見出した。
腸管に寄生する寄生虫は、様々な免疫応答を変化させることで、種々の自己免疫疾患やアレルギーを抑制する力があることが報告されている。肥満は慢性炎症の1つとして知られ、近年世界中で増加している。「寄生虫によって痩せる」という話は昔から存在するが、実際には、不明な点が多いのが現状であった。
そこで、同研究グループは、マウスに高脂肪食を1ヶ月間与えて太らせた後、寄生虫を感染させ、体重などに及ぼす影響を調べた。その結果、食餌量は同等でも、寄生虫が感染したマウスは体重の増加抑制、脂肪量低下、血中中性脂肪および遊離脂肪酸量の低下が見られることが分かった。さらに同グループは、種々の検討により、腸管に寄生する寄生虫がマウスの腸内細菌叢を変化させ、神経伝達物質であるノルエピネフリンを分泌するような特殊な腸内細菌を増加させること、また、それによって交感神経が優位になり脂肪細胞を熱産生へと働かせるUCP1の発現を上昇させ、体重の増加を抑える、という一連の流れの解明に成功した。
本成果により、寄生虫が体重増加を抑制するメカニズムが世界で初めて証明されたことにより、将来、肥満に対する新しい治療法の確立に貢献することが期待される。