中部大学応用生物学部環境生物科学科の長谷川浩一教授と博士後期課程1年の杉山大騎大学院生は、従来にない高い殺虫力を持つ昆虫病原性線虫を新たに発見した。本研究は、化学農薬に頼らず環境にやさしい生物農薬の開発と、持続的な食糧増産を目指す総合的病害管理(IPM)の推進に大きく貢献する成果といえる。

 昆虫病原性線虫は、化学農薬に替わり、生物そのものの力を活用した「生物農薬」として実用化されており、環境に配慮した病害虫の防除・駆除手法として期待されている。

 今回、長谷川教授と杉山大騎大学院生は、岐阜県恵那市の土壌から、スタイナーネマ・モンティコラム(Steinernema monticolum、株名KHA701)という種に属する新しい線虫を発見した。

 この線虫は、ハチノスツヅリガ幼虫を用いた実験において、殺虫力の高さで知られるヘテロラブディティス・バクテリオフォーラ(Heterorhabditis bacteriophora)を越える非常に高い殺虫能力を備えていることが確認された。また、広範囲の節足動物(ツマグロヨコバイ、マイマイガ、チャバネゴキブリ、ジョロウクモなどを含む18目41科63種)に対して殺虫力を発揮する特徴を示した。

 これまでスタイナーネマ・モンティコラムの共生細菌はゼノラブダス・ホミニキィ(Xenorhabdus hominickii)であることが知られてきたが、今回発見したスタイナーネマ・モンティコラムは、ゼノラブダス・ホミニキィに加え、それ以上の高い殺虫力を持つ細菌を多種共生させていることも見出した。共生する細菌を組みわせることが、線虫の殺虫力増強のしくみであることが初めて示されたとしている。

 現在、世界の人口は約81億人に達し、2050年には100億人を超えると予測されている。一方で、世界の農作物の約40%が害虫被害によって失われている。今回の発見により、殺虫力が異なる共生細菌を人為的に組み替えて、世界中の多様な気候・環境で発生する害虫に応じた「プログラム可能な生物農薬(Programmable Biopesticide)」の開発につながることが期待できる。

参考:【中部大学】極めて高い殺虫力を備えた昆虫病原性線虫を発見─ 化学農薬に替わる環境にやさしい生物農薬による持続的食糧増産を目指す ─(長谷川浩一教授)

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