文部科学省は海外から優秀な若手研究者や博士課程学生を受け入れる国内トップレベルの大学に対し、10兆円規模の大学ファンドを緊急活用し、2025年度から3年間で総額33億円助成することを決めた。海外の若手研究者を戦略的に招へいする政府方針が内閣府から示されたのを受けた措置で、9月をめどに支援校を選定する。

 文科省によると、支援校は
・定量的指標で表した受け入れ研究者の研究力
・大学の研究環境と改革計画
・大学の研究力向上につなげる計画
・事業終了後の雇用計画
-などを審査して決める。支援校に選ばれれば、若手研究者の雇用経費、研究費、研究立ち上げに必要な経費、優秀な博士課程学生確保のための経費が大学ファンドから支給される。

 政府方針は6月、1,000億円規模の政策パッケージ「J-RISE Initiative」として内閣府が発表した。海外在住の日本人研究者も含め、優秀な若手研究者を国内の大学が戦略的に招へいし、日本の科学技術力向上を図る狙いを持つ。論文発表など多方面で日本の研究が国際的な地位を落としつつあることへの強い危機感が背景にある。

 なお、従来は大学ファンドの運用益は国際卓越研究大学および博士課程学生への支援に充てることが定められていた。しかし6月30日に国際卓越研究大学法に基づく「国際卓越研究大学の研究及び研究成果の活用のための体制の強化の推進に関する基本的な方針」が改訂され、2025年度秋の新学期を見据え、できる限り早期に海外から優秀な若手研究者等を積極的に受け入れる大学も支援の対象となることが盛り込まれた。

 大学ファンドは世界最高水準の研究大学を作る目的で、科学技術振興機構が2022年から運用している。2024年度の運用実績は当期純利益で前年度を1,393億円上回る2,560億円の黒字。運用資産額は11兆1,056億円となった。

参考:【文部科学省】大学ファンドの緊急的な活用による海外の優秀な若手研究者等の受入れ支援についてお知らせします
【科学技術振興機構】2024年度業務概況書(PDF)

大学ジャーナルオンライン編集部

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