政府は大学の研究環境を抜本的に強化し、学術研究・基礎研究の分野に大胆な投資を実行するため、2021年度予算案に最大10兆円規模の大学ファンド創設を盛り込み、閣議決定した。米ハーバード大学などをモデルとする国内初の試みで、財務省は硬貨製造のために備蓄していた金を売却する異例の策で財源をねん出する方針。

 内閣府、文部科学省によると、政府は大学ファンドに5,000億円を出資する。この出資金と財政投融資で集めた4兆5,000億円規模の基金を科学技術振興機構の下に設置、2022年度から運用を始める。その後、大学から出資を募るなどして2023年度をめどに10兆円規模まで増額する方針。運用益は世界的な研究開発に取り組む大学などへ分配する。

 新型コロナウイルスの感染拡大で政府の財政はひっ迫の度が増している。赤字国債を発行して財源を調達する方法も考えられるが、この方式を採用すれば社会保障など他の分野に波及して歯止めが利かなくなるとして、金の売却で税外収入を確保する方策を取った。

 しかし、手本としたハーバード大学が寄付金など自己資金で基金を運営しているのに対し、今回は官頼みのスタート。大学側が今後、どこまで基金に積み増しをするか不透明なうえ、具体的な運用方法は明らかにされていない。運用に失敗すれば国民負担が発生するだけに、先行きを不安視する声も上がっている。

参考:【内閣府】日本の未来を担う研究者の皆さまへ
【文部科学省】令和3年度予算案のポイント(PDF)

大学ジャーナルオンライン編集部

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