名古屋大学は宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発した探査機「はやぶさ2」による小惑星リュウグウ探査プロジェクトの研究に参加。同大学の渡邊誠一郎教授が研究を統括、諸田智克講師が画像解析を担当している。今回、これまでの科学探査に関する発表がなされた。初期研究成果は4月19日付米国科学雑誌サイエンスに3編の論文として公開されている。
2014年12月に打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ2」は、2018年6月に炭素質小惑星(C型小惑星)リュウグウに到着した。約1ヶ月間の近傍観測から、リュウグウは赤道リッジ(赤道に沿って一周する高地帯)をもつコマ型(そろばん玉のような形)天体であり、岩塊(ボルダー)が表面全域に多く点在し、赤道付近に大きなクレーターが存在することなどの特徴が判明した。
リュウグウは破片が集積してできた天体であることが分かり、過去の高速自転による変形で形成されたと推定される。数値計算により天体内部の強度が弱く、一様な場合、内部から変形が進むことを示した。
岩塊が密に分布する表面に対して、着陸安全性と科学的評価の両面から試料採取のための着地点選定作業を進めた。その結果、赤道リッジ上に第一候補地域を選び、その中の半径3mの領域を目標とし、2019年2月22日7時29分(日本時間)、ピンポイント着地に成功した。
衝突装置によって発射された弾丸により、人工クレーターの生成に成功した公算が高く、その直径から、天体内部の強度の推定が可能になる。小惑星帯から地球への物質輸送過程を明らかにする上で、小惑星の強度は鍵として重要とされる。今後の「はやぶさ2」の観測結果の解析と帰還試料の分析から理解がさらに進むことが期待される。