東京工業大学のグループが、様々なナノ物質のエネルギー状態を正確に予測する「対称適合軌道モデル」を開発した。また、この理論モデルにより、複数の原子からなる高次の物質の間にも元素のような周期律が存在することを発見し、元素周期表と類似の「ナノ物質の周期表」として表すことに成功した。

 原子が持つ物理的・化学的性質の周期的な変化(周期律)を表す元素周期表は、150年前にロシアの化学者メンデレーエフにより提唱されて以来、自然科学の発展に大きく貢献してきた。

 単一の原子の性質が扱われている元素周期表に対し、複数の原子からなる高次の物質でもこのような周期律が発見されれば、物質科学の世界において有用な指標となることは間違いない。しかし、高次の物質は大きさ・組成・形などの様々な要素を持っており、単純な分類は難しい。

 本研究では、分子などの微小な物質(ナノ物質)が持つ幾何学的対称性に着目し、コンピューターシミュレーションと群論を応用することで、ナノ物質のエネルギー状態を予測できる「対称適合軌道モデル」を構築した。このモデルに基づいてナノ物質を評価することで、形状・性質・安定性などの正確な予測が可能だという。

 また、原子の周期律の起源が電子配置にあるのと同様に、ナノ物質の性質も電子配置によって決まり、ナノ物質の持つ電子軌道が幾何学的対称性ごとにある一定の法則に従うこと、つまり周期律があることも本研究によって見出された。この周期律を、従来の元素周期表にある「族」「周期」に加え、「類」「種」という新たな軸を持つ多次元の周期表に表すことに成功した「ナノ物質の周期表」は、幾何学的対称性ごとに異なるものが存在するという。この周期表に従ってナノ物質の設計や探索を行うことで、未知の物質や新たな機能材料の創出が期待できるとしている。

論文情報:【Nature Communications】Periodicity of molecular clusters based on symmetry-adapted orbital model

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