静岡県立大学の中野祥吾助教らの研究チームは、第5の科学(理論科学・実験科学・計算科学・情報科学を融合させた科学)に基づく人工設計法により、L-アミノ酸酸化酵素を、低コストで製造する技術の開発に成功した。
生物に普遍的に存在しているL-アミノ酸酸化酵素は、生体内ではL-アミノ酸からケト酸を生合成している。産業利用では、合成が難しいケト酸や、希少なD-アミノ酸が合成できるなど有用性が高く、中分子医薬品、ファインケミカル、エネルギーなど、幅広い分野での応用が長年期待されてきた。しかし、世界各地で探索された天然型L-アミノ酸酸化酵素は、いずれも難生産性で安価な調整が困難であり、発見から100年経つが産業利用は頓挫していた。
研究チームは、近年の技術革新により増大し続けるデータベースと、研究者の積み上げてきた知見を融合し、遺伝子をコンピューター上で高機能化する技術を開発してきた。研究では、海洋性微生物のゲノムデータベースを活用、新規アミン酸化酵素遺伝子群に対して、独自のプログラムと祖先型設計法を適用、人工酵素を設計した。設計された人工酵素は、①大腸菌で安価に生産が可能である、②13種類のL-アミノ酸、18種類の非天然型アミノ酸に反応する、③反応する非天然型のアミノ酸において、ラセミ体から光学純度99%以上でD-アミノ酸誘導体に変換が可能であることを確認した。
今回の成果は特許出願済であり、今後は実用化を希望する企業と研究開発を進めていく予定。理論・実験・計算・情報の科学研究に人工知能技術を取り入れ、戦略的に実験データを集めて研究全体を加速させる仕組みが構築されることが期待できるとしている。