神戸大学の松山秀人教授、吉岡朋久教授らの研究グループは、親水性シリカ超薄層を高分子多孔膜の表面に形成した油水分離膜の開発に成功した。
油分で汚染された廃水の清浄化は、世界的に不足している水資源の確保の面から非常に重要だ。従来の油分汚染水の処理方法である凝集法や空気浮上法では、直径20マイクロメートル以下の微小な油滴の分離が難しい。一方、膜分離法は省エネルギーだが、油分汚染水処理では油滴が細孔をふさぎ、水の透過が減少する。また膜表面へのタンパク質などの付着による性能低下も問題だ。このため、超微細油滴を効率良く確実に分離でき、かつ高い水透過性を持った高機能性分離膜の開発が求められていた。
研究グループは今回、表面修飾によりプラスの電荷を与えた多孔膜に、マイナス電荷を有するシリカ源を反応させ、多孔膜の表面に約10ナノメートルの厚さの超薄シリカ層を形成することに成功した。
超薄シリカ層は親水性で膜表面に薄い水の層を形成して油を弾き、廃水から油分を分離してきれいな水を得る。また、多孔膜の細孔を閉塞せず、膜は重力だけで極めて高速に水を透過できる。油滴を99.9%以上阻止し、1時間に6000リットル(1平方メートルあたり)の廃水を処理できる。数10ナノメートルの極小油滴も阻止でき、多種類の油分による汚染水にも有効。また、膜に油滴が付着しにくく、簡単な洗浄で油滴が容易に剥がれ、油滴の細孔閉塞も生じにくい。さらに、界面活性剤やたんぱく質に対しても汚れにくい。
今回開発した膜は、ベースとなる多孔膜の細孔を制御すれば、様々なサイズの油滴の除去に適用可能。産業廃水など種々の油分汚染水の清浄化への利用が期待できるとしている。