北海道大学の野々山貴行特任助教、龔(グン)剣萍(チェンピン)教授らの研究グループは、高温で瞬時に約2000倍硬くなる新規高分子ハイドロゲルを世界で初めて開発した。
一般にペットボトルなどの高分子材料は低温で硬く(ガラス状態)、高温で柔らかく(ゴム状態)なる。研究グループは、温泉源などに生息する好熱菌の100℃以上の高温でも変性しないタンパク質構造に着目し、一般の高分子とは逆に低温で柔らかく高温で硬くなる高分子ゲルを作製した。
食品添加物にも使用されるこの高分子ゲルは、汎用性のある安価で無毒な原料から簡単に作製でき、室温付近の比較的低い温度では柔らかく伸びやすいが、ある温度以上で急激に硬くなる。これは、柔らかい食用ゼリーが硬いプラスチックへ瞬時に変わるほどの劇的な変化だ。冷やすと元の柔らかい状態へ戻り、急激な硬化を何度でも繰り返せる。また、硬化する温度はゲルの調製条件しだいで、目的温度に合わせた材料を設計できる。
また、この高分子ゲルとガラス繊維布を複合した材料は、交通事故やスポーツのアクシデントの際に、発生する大きな摩擦熱で硬くなり身体を保護するスマートプロテクターに応用できる。実際に、アスファルト表面に荷重を掛けて高速で引きずると、ゲル繊維複合体が摩擦熱で硬くなり、ほとんど壊れなかった。また、硬くなる際に大きな熱吸収を伴うため、酷暑対策用の熱吸収材に利用できる。窓ガラスに貼ると、太陽からの熱の一部を吸収し、室内の温度上昇を抑える効果が確認されている。
今回の成果は、高温で硬くなる新規温度応答性高分子の基礎研究及び温度応答型スマート材料の応用研究の促進にも貢献することが期待される。