動物園と動物アニメが絶滅危惧種への市民の関心を高め、保全のための行動(寄付)を促進することを、東京大学大学院農学生命科学研究科附属生態調和農学機構の深野祐也助教らが明らかにした。
世界的に進行する生物多様性の減少を止めるためには、専門家だけではなく市民が関心を持ち、その保全に協力・参加することが重要だ。動物園とテレビ番組は、市民が絶滅危惧種のことを知る重要な手段と言えるが、その効果を定量化した研究はこれまでなかった。
本研究では、日本全国の動物園と、2017年1月からテレビ東京などで放映され話題を集めた、絶滅危惧種を含むさまざまな動物が登場するアニメ「けものフレンズ」を対象として、市民の絶滅危惧種への関心や保全のための行動に与える影響を調べた。
まず、市民の関心の指標として、Googleでの検索数とWikipediaの閲覧数を解析すると、例えば、ある動物を飼育する園が1つある県では、動物園がない県に比べて、検索数が2倍に増加していた。この効果は、動物園が増えるほど強まる傾向にあった。
また、けものフレンズの放映前後を比較したところ、アニメの放映によって、アニメに登場する動物の検索が合計で600万回以上、Wikipediaでの閲覧が100万回以上増加したと推定された。
さらに、動物園の寄付記録から、アニメ放映後、アニメに登場した動物はそうでない動物より多くの寄付を受けていることがわかった。関心が高まった種ほど寄付の増加数も高い傾向にあり、関心の増加が保全のための行動を促すことが明らかとなった。
本研究により、世界中で楽しまれている動物園と動物アニメが、生物多様性の普及啓発という重要な役割を果たしうることが示された。今後、生物多様性保全を担う機関・行政・専門家とメディアやエンターテイメント産業が連携することで、より効果的な保全を推進できる可能性も示唆している。