「次世代人工知能・ロボット中核技術開発」に取り組んでいる新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と中央大学は、人工筋肉に用いるゴムの伸張結晶化特性を利用し亀裂の広がりを防いで、人工筋肉の最大100倍の長寿命化に成功した。
身体装着型アシスト装置で使用する駆動装置の一つに「軸方向繊維強化型人工筋肉」がある。これはゴムチューブの中に軸方向にそろえた補強繊維を挿入した構造で、空気圧を加えると半径方向に膨張、軸方向に収縮する。また、軽量・柔軟で、一般的な人工筋肉より優れた収縮特性がある。しかし欠点は、大きく変形するためゴムの劣化による亀裂が生じやすく寿命が短いことだ。
ゴムは外部応力によりひずみが発生すると、ある応力に達したところでゴムの分子鎖の最も結合の弱い部分が切断され、さらに隣の分子鎖に大きな負荷がかかり、次の分子鎖が切断される。これを繰り返して亀裂が広がり最終的に破断する。しかし、ゴムの伸張結晶化特性を利用すると、伸張により形成された結晶層が亀裂の広がりを防ぎゴム材料を長寿命化できる。
実験では、ゴムは元の長さの3~4倍以上伸張した状態で結晶層の形成が観察された。そこで研究グループは、結晶層維持のためゴムが一定程度以上伸張した状態を常に保つように人工筋肉を制御した。従来は伸縮回数が数百から数千回で破断。目標は装着者が1日5時間稼動で1年程度使用可能な20万回だったが、開発した制御手法により80万回を超える伸縮が可能となった。
これにより軽量・高出力で安全性が高いアシスト機器が実現可能で、形状自由度が高いため応用範囲も広い。今後、可変粘弾性下肢アシスト装具などへの適用を目指すという。
参考:【国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構】人工筋肉の寿命を最大100倍にすることに成功―身体装着型アシスト装具などへの応用を目指す―