琉球大学の広瀬裕一教授らの研究グループは、ウミクワガタ科のメス幼生はオス成体に誘引され、オスがいなければ幼生期を延長することを明らかにした。
ウミクワガタはダンゴムシやフナムシなどと同じ等脚目甲殻類。体長数ミリの海の動物でオスは大顎を持つ。メスの繁殖機会は一生に1回で、子を産んだ後すぐに死ぬが、オスは死ぬまでに複数のメスと繁殖できる。研究グループは、オス・メス間の出会いの仕組みを探った。
実験の結果、オス成体は性フェロモンによりメス幼生を誘引していることが判明。ウミクワガタの幼生は吸血や天敵から逃れるためによく泳ぐが、成体はそれほど活発に動かない。そのため、オス成体がメスを探すより、メス幼生がオス成体を探して移動する方が効率的と考えられる。
また、メス幼生はオスが近くにいるかいないかで幼生期間が大きく異なった。単独飼育ではオスは約1週間、メスは約1ヶ月で脱皮して成体に変態するが、メス幼生をオス幼生やオス成体と一緒に飼育すると平均18日(最短8日)でメス成体に変態した。一般に等脚目のメスは脱皮直後の外骨格が柔らかな時にしか交尾できず、そのとき近くにオス成体がいないと繁殖できずに死ぬ恐れがある。メス幼生による幼生期間延長は繁殖に失敗しないために重要とみられる。
他の甲殻類でも「メスの変態延期」報告例があるが、延長可能な幼生期間は数時間から3日程度。2週間以上の変態延期の発見は今回のウミクワガタが初めてだ。ウミクワガタの繁殖様式は、生涯に1度変態直後の短期間にしか繁殖できないメスと、死ぬまで複数のメスと繁殖できるオスが、必要なタイミングで出会い繁殖に成功するために進化したとみられるという。