東京医科歯科大学の藤原武男教授らと東京工業大学の宮崎祐介准教授の研究グループは、国立成育医療研究センターとの共同研究で、乳児虐待に多い「揺さぶられ症候群」と「口塞ぎ」を予防するために厚生労働省と共同で作成した動画「赤ちゃんが泣き止まない」を母子保健行政に取り入れ、赤ちゃんへの揺さぶり・口塞ぎを52%まで激減させられることが分かった。
児童虐待による死亡事例検証では、4分の1が虐待による頭部外傷で、その多くが乳幼児揺さぶられ症候群とされる。虐待の引き金になるのは乳児の泣きであり、泣きへの対処を教える動画によって予防できると考えられた。そこで、視聴者にとってインパクトのあるビデオによる効果検証を行う必要があった。
日本のA市で検証を実施。こんにちは赤ちゃん事業等による、産後2ヶ月時の家庭訪問で厚労省が作成した動画「赤ちゃんが泣き止まない」を視聴させるという研究を行った。家庭訪問は助産師、保健師、トレーニングされたボランティアが実施した。
4ヶ月健診時に、対象となった産婦に動画の視聴状況、虐待行為などについて質問紙で調査、合計で5961名の回答があった。解析の結果、動画を見た産婦は、乳児を揺さぶる割合が74%、口塞ぎの割合が43%、どちらかの乳児虐待は52%、低いことが分かった。
乳児の泣きや、解剖学的なメカニズムに基づく揺さぶり・口塞ぎの危険性に関する教育的動画は、産後4ヶ月時の揺さぶり・口塞ぎを半減させる可能性があることが示された。今後もこんにちは赤ちゃん事業等で厚労省が作成した動画「赤ちゃんが泣き止まない」を全ての産婦に視聴させることで、虐待による頭部外傷を半減できる可能性があるとしている。