京都大学の西海望博士後期課程学生(研究当時)と森哲同准教授は、カエルとヘビが対峙したまま動きを止める現象が、後手に回って行動することが有利だという双方の適応的な意思決定によって成り立つことを明らかにした。
捕食者と被食者が対峙したとき、一般に先手を取った側が有利とされてきた。しかし、「ヘビににらまれたカエル」というように、カエルの多くはヘビに直面するとまず静止し、ヘビが襲い始めるか至近距離まで到達してから、ようやく逃げ始める。ヘビもこの状況でわずかに接近しつつも静止していることが多く、ときに1時間近く静止することもある。いわば膠着状態である。
今回、室内実験下でトノサマガエルとシマヘビを対面させ、トノサマガエルの跳躍による逃避の動きとシマヘビの咬みつきの動きをビデオ撮影し分析した。その結果、ある距離以上離れている場合、トノサマガエルが逃げるために跳ぶと、動きを読まれ空中で捕らえられる恐れがあった。シマヘビもいったん咬みつきの動作を始めると、進路を読まれてよけられやすかった。しかし、相手の動きを読みにくい接近した距離(間合い)では、両者は後手から先手に切り替えていることが分かった。
両者はシマヘビの第一撃の当たりやすさを基準に、先手か後手かの判断を適切に行い、トノサマカガエルが第一撃をかわせる距離では、両者は相手の先手を待つという適応的な選択を行う結果、膠着状態になることが示唆された。
西海氏は、「ヘビににらまれたカエル」とは、「危機をうまく切り抜けようと虎視眈眈と相手が動きだす瞬間を狙っている状況の喩えとして用いる方が、生物学的には正しいのかもしれ」ないと語っている。