早稲田大学理工学術院の林泰弘教授らの研究グループは、電力と交通の最適化でスマートシティの実現を目指す「早稲田大学E-MaaS(マース、※1)構想」をまとめた。都市行政に科学的根拠と指標を提供するのが目的で、二酸化炭素の削減と公共交通利用率の向上を同時達成するなど、国内社会の多様な課題解決支援を目指している。
早稲田大学によると、林泰弘教授らの研究グループは電力や交通、人の流れといったデータを一体的に分析、予測する「時空間マルチダイナミクス予測エンジン」の開発を進めている。これを活用し、再生可能エネルギーを最大限に利用した二酸化炭素排出の少ない社会実現と、公共交通のダイヤ運航を最適化することで移動ストレスのない都市の実現を目指す。
電力は栃木県宇都宮市で1年間進めたスマートデータを解析、マップ上に示す見える化を進めているほか、交通は宇都宮市で行ったMaaS社会実験で得られたデータを分析している。
スマートシティの実現については、政府の中央省庁が連携して多くの実証事業に入っているが、これまで電力と交通が別々に最適化を進められてきた。このため、異なる条件を同時に満足させる全体最適の検討が難しかった。
※1 MaaS 出発地から目的地への移動を最適な交通手段による一つのサービスとしてとらえる新たな移動の概念。IT技術との融合で移動手段がサービスとして最適化されることを意味する