名古屋市立大学の青柳忍准教授は高輝度光科学研究センター(JASRI)、広島大学と共同で、世界で初めて水晶振動子の振動機構を解明しました。水晶振動子は時計など身の回りの様々な機器に利用されているものの、その動作原理は良く分っていませんでした。

 水晶は地球上に豊富に存在するケイ素と酸素から成る物質です。アクセサリなどに用いられるほか、電子機器など様々なところで用いられています。電子部品としての重要な性質は極めて安定した周波数の電気信号を発することで、時間を計るのに欠かせない部品となっています。広く使われているにもかかわらずなぜそのような安定した信号が出るのかは良く分らないままでした。

 水晶中のケイ素原子と酸素原子はそれぞれプラスとマイナスの電気を帯びています。この水晶に電圧をかけると、ケイ素イオンと酸素イオンが逆方向に互い違いに振動することで電気信号を発していると考えられてきました。しかしケイ素と酸素の間の化学結合は強く、このような振動が可能なのか疑問が残っていました。この謎を解明するためには原子の動きを直接観測することが必要ですが、水晶の動きは非常に小さいためこれまでの測定方法では困難でした。グループは水晶の振動の周期と電圧をかける周期をそろえることでこの動きを増幅することに成功しました。お寺の鐘を規則正しく押せば、指一本でも大きな揺れを起こせるのと同じ原理です。これによって中の原子の動きを直接測定ができるようになったのです。その結果、原子同士が互い違いに振動するのではなく、化学結合の向きが変わるように振動していることが明らかになりました。

 水晶が電気信号を発する仕組みが明らかになりましたが、グループによるとこの原理を使って原子の運動エネルギーを効率よく電気エネルギーに変換する技術に応用できる可能性があるそうです。今後は革新的な発電方法につなげることができないかを探索していくとしています。

大学ジャーナルオンライン編集部

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