京都大学と共和病院(愛知県大府市)の研究グループは、行動依存症の患者はリスクを取る傾向があり、それが脳の前頭前皮質の活動減弱と関連していることを明らかにした。
行動依存症は、不利益な結果を想定しながらも特定の行動への衝動が抑えられず、何度も繰り返す行動障害。ギャンブル依存に加え、近年では、インターネットやゲームに対する依存など、社会的な注目を集めている。また、万引きなどの窃盗症、盗撮や痴漢などの性嗜好障害といった、犯罪と知りつつも繰り返し衝動的に行ってしまう行動も、依存症とされているが知見は乏しく、その全貌は不明であった。
研究では、窃盗症と性嗜好障害の入院患者16 名と健康な成人男女31 名を対象に、経済活動に関連する意思決定の調査と、意思決定までの慎重さを推定する「結論への飛躍課題」 を行い、光トポグラフィーという手法によって課題実行中の脳活動を計測した。
その結果、行動依存症患者は、意思決定調査では賭けなどで高いリスクを追求することに加え、IQが重要な要因であることが判明した。また「結論への飛躍課題」では、課題の正答率が低く、ものごとの確率を正確に計算判断できていなかった。光トポグラフィーを用いた脳活動計測により、課題実行中の右前頭前皮質の活動の減弱が判明した。
したがって、行動依存症では、前頭前皮質が正常に活動しない結果、依存行動時の社会的リスクが認識できないと考えられる。万引きや盗撮、痴漢などの犯罪行為は、多くの場合、精神疾患とは認知されず治療対象になっていない。しかし、今回の研究結果からは、その認知特性や脳活動の異常が見出され、犯罪の抑止として適切な治療が重要性としている。