日本学術会議は、2017年に出した軍事研究をしないとする声明に対し、研究機関・学協会の対応を聞き取った2つのアンケート調査の結果を分析した。その結果、半数近くが軍事的安全保障研究の適切性を審査する組織を設けるなど、声明を真摯に受け止める機関が多かったものの、声明が現実とかい離していると批判する声も見られた。

 
 日本学術会議は2017年3月24日、過去2回にわたって出してきた声明を継承し「軍事的安全保障研究に関する声明」を公表している。声明においては「大学等の研究機関における軍事的安全保障研究、すなわち、軍事的な手段による国家の安全保障にかかわる研究が、学問の自由及び学術の健全な発展と緊張関係にある」ことを確認。
その上で、軍事的安全保障研究と見なされる可能性のある研究について、目的、方法、応用の妥当性の観点から適切性を技術的・倫理的に審査する制度を設けることを大学等の各研究機関に求めた。学協会等に対しては、各学術分野の性格に応じたガイドライン等の設定を求めた。

 今回の調査はそのフォローアップのために行われたもので、2018年に実施した大学等研究機関アンケートと2020年1月の学協会アンケートを分析した。大学等研究機関アンケートは一定の基準で選定した大学、大学共同利用法人、国立研究開発法人など135機関、学協会アンケートは日本学術会議登録の379研究団体から回答を得た。

 大学等研究機関アンケートでは、回答機関の7割が声明に対し何らかの対応を行い、45%が軍事研究の適切性を審査する組織を設けていた。自由回答では生命に基本的に賛同する声が多かった一方、「声明に現実とかい離した部分がある」「資金の出所が防衛装備庁であっても平和利用なら問題ない」とする意見もあった。

 学協会アンケートでは、軍事研究について何らかの議論をした団体は7%にとどまり、今後議論する可能性について57%が「行うことはない、行う可能性は少ない」と答えている。声明に対してはおおむね同意していたが、「軍事研究かどうかの線引きは困難」「規制は学問の発展を阻害する」との声も出た。

参考:【日本学術会議】「軍事的安全保障研究に関する声明」への研究機関・学協会の対応と論点(PDF)

大学ジャーナルオンライン編集部

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