長崎大学病院は、外傷センター・救命センター・看護部の3部署に、株式会社ワーク・ライフバランスが提供する長時間労働削減及び生産性向上のための「働き方改革コンサルティング」を導入。その結果、医療チームが患者の治療の方向性を話し合う会議「カンファレンス」の所要時間を約3割削減、業界初となる医師の週4日勤務体制の実現など様々な成果が得られた。
昨今、医師の過重労働や労働環境を原因とした担い手不足に関する課題が注目されるなか、2024年4月以降には、医療業界においても時間外労働の上限規制が適用され、今まで以上に残業時間の削減や、業務の効率化が求められている。さらに、コロナ禍で勤務環境の過酷さが増し、医療従事者の離職増加が浮き彫りになっている。
このような社会状況において、長崎大学病院では、2015年から働き方改革に着手。2019年9月から、外傷センター・救命センター・看護部の3部署に対して、ワーク・ライフバランスが医師や看護師の働き方改革の支援を行ってきた。
その結果、外傷センターでは、情報の一元化により医師と看護師の連携が強化され、伝え漏れがなくなったことで、看護師から医師に対して検査の指示などを求める依頼の60%を削減。また、カンファレンスを内容によって別の会議に切り分けることで参加人数を50%削減できた。
救急車やドクターヘリの受け入れで業務負荷が増加していた救命センターでは「申し送り時間(患者の容体や治療方法等に関する情報を引き継ぐ時間)」が治療のための時間を圧迫していたことを発見。質問と発表を分け、教授自ら時間を計測するなど時間を意識した結果、申し送り事項の質を落とさず時間を25%短縮することに成功した。
発表の時間と質問の時間を分けることで25%短縮。さらに、初日以外の「申し送り時間」も15%短縮させ、申し送りにかかわる総時間を質を落とさず約30%も削減した。
看護部では、情報連携や、チームワークを高める「声かけシート」の作成や仕事のメリハリをつけて帰宅する日を決める「帰ろうDay」などを設定することで、働き方を変えることに対しあまり積極的ではなかった部内が「助け合う意識がより高くなった」、「思っていても声に出さなかったことをなるべく出すようにした」など、86.9%がポジティブな変化を感じるようになったという。
外傷センターの宮本俊之医師は「2019年9月から働き方改革のコンサルティングを受け、若手医師の意見を積極的に採用していく中で、勤務日数を変更するといった大胆な案も出てくるようになりました。我々のような管理職世代の意識改革を進め、年代問わず多くの医療従事者が意見を出していけば、医療現場でも必ず変化は出せると確信を持っています。今後は、週4日勤務に変更し、総労働時間削減に挑戦する予定です」とコメントした。