東北大学の研究グループは、人工知能の一つである機械学習の手法を活用することで、自閉スペクトラム症(ASD)が異種の疾患の集合体である可能性があることを世界で初めて突き止めた。

 ASDの主な特徴は、常同行動とコミュニケーション障害であるが、音への過敏や統合運動傷害など、他にも多くの症状を示す場合がある。ASDのリスク増加には遺伝的要因が強く寄与していることが示唆されているが、現在のところ1,000を超える候補遺伝子が報告されており、遺伝的感受性因子の特定には至っていない。

 こうした中、本研究では、人工知能技術である機械学習を用いて、ASDが示す多様な症状からクラスター分析を行い、ゲノムワイド関連解析(GWAS)と組み合わせることで、遺伝的感受性因子を特定するチャンスが増えるのではないかと仮説を立てた。

 実際に、ASDという疾患名でまとめられた「患者群全員」と対象群を用いたGWAS手法では、有意な関連が観察されなかった一方で、ASD患者をグループ化(クラスタリング)し、「クラスターごとの患者群」と対象群とで実施されたGWASでは、65個の有意な遺伝子座が特定されたという。つまり、ASDは異種の疾患の集合体である可能性があり、症例をより均質な集団にクラスタリングすることで、それぞれの集団の特徴に応じた個別化医療の実現が期待できる。

 本成果は、ASDの遺伝的構造と病因を解明し、ASDの精密医療の開発を促進する手がかりを提供したとともに、機械学習の手法を用いて疾患群をクラスターに分けて分析した方が関連する遺伝子を見つけやすいという知見も得たことで、今後、多くの疾患の個別化医療の進展に貢献すると考えられる。

論文情報:【Translational Psychiatry】Clustering by phenotype and genome-wide association study in autism

大学ジャーナルオンライン編集部

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