東北大学大学院医工学研究科の鎌倉慎治教授らのグループは、生体材料埋入時に骨粗鬆症治療薬を添加することで、大きな骨欠損を飛躍的に修復させる革新的技術を開発した。
大きな骨欠損は様々な機能障害を伴い、その治療も容易ではなく、多くは自家骨移植や生体材料(人工骨)による骨再生が必要となる。骨欠損の修復には、国内外において骨粗鬆症治療薬(反復皮下投与)として広く使用されるテリパラチド(TPTD)と生体材料を局所併用する試みが行われてきたが、臨床現場で想定される大規模な骨の修復に対しての有用性は確立していない。
東北大学は2019年、歯科・口腔外科領域の骨欠損に対して自家骨移植を回避できる生体材料「OCPcol」を製品化した。OCPcol は骨形成細胞分化や血管新生を促し、優れた骨再生能と生体吸収性を有する。また、細胞や成長因子の補充なしで骨再生を実現し、出来た骨は元の骨と同等な性質を示す。使用法は簡便で煩雑な操作や管理体制が不要で、優れた費用対効果を持つ。
今回、このOCPcol に骨形成促進作用を有するTPTD を添加することで、「大きな骨欠損」を修復できることを明らかにした。TPTD を添加した OCPcol はOCPcol 単独に比べ、早期に骨欠損全域で骨修復が行われ、全ての実験例において「大きな骨欠損」は十分量の骨組織に置換した。一方、OCPcol 単独では 60%の症例に有効な骨再生を認めたが、TPTD を滴下した市販人工骨では有効な骨再生を認めなかった。TPTD の添加は OCPcol 埋入時のみで、追加投与は必要としない。
今回開発した技術は、「大きな骨欠損」に対して、標準的治療法である自家骨移植に代わる治療法になり得る。さらに、その簡便な方法は緊急手術を含めた様々な医療現場での応用が期待される。