横浜市立大学大学院生命医科学研究科小川毅彦教授、医学研究科泌尿器科学矢尾正祐教授と大学院生古目谷暢医師らは、マウスの精巣組織をマイクロ流体デバイスで培養し、6ヶ月間以上の精子形成維持に成功。これにより男性不妊の病態解明や治療法の開発、また、再生医療や創薬分野への波及効果が期待できるとしています。この成果は、東京大学生産技術研究所藤井輝夫教授、東海大学工学部機械工学科木村啓志准教授、理化学研究所バイオリソースセンター遺伝工学基盤技術室小倉淳郎室長との共同研究によるものです。

 小川教授らは2011年に気相液相境界部培養法により、マウスを用いて生体外(培養器内)の精子形成に世界で初めて成功しました。しかし、この精子形成は生体内よりも効率が低く2ケ月ほどで消失しました。この方法では組織外周から物質供給を行うため、培養組織中央部での栄養不足など生体内現象が再現されていないことが課題とされました。そこで、今回、半導体製造技術を応用したマイクロ流体システムを用いて生体内での物質供給を疑似的に再現し、デバイス内に微細な回路を作成して培養液を流し、精巣組織とは多孔膜で隔てることで、生体内の血流環境を再現しました。この装置により生後約2日以内の新生仔マウスの精巣を培養したところ、精巣組織全般に精子形成を確認、6カ月間以上にわたり精子産生が認められ、顕微授精により健常な産仔も得られました。さらに培養4カ月時点で男性ホルモン産生能も維持されていました。

 今回のように半年以上の長期にわたり組織の構造と機能を体外で維持できた研究はありません。今回開発したマイクロ流体デバイスによる成果は、今後の精子形成研究を促進するとともに、ヒトを含む他動物種の精子形成研究や精巣以外の組織培養への応用など、再生医療や創薬分野への波及効果も期待されます。

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