京都大学大学院の北山兼弘教授、潮雅之特定准教授、北海道大学大学院の相場慎一郎教授らの研究グループは、北ボルネオのキナバル山で熱帯降雨林の観測を10年間継続し、樹木成長には明確な12ヶ月の周期性があることを発見した。

 これまで、赤道付近の熱帯降雨林帯では気候的な季節性が見られないことから、熱帯降雨林の植物には1年周期の季節変化が存在しないとされてきた。しかし、赤道熱帯での植物の周期性については十分記録されておらず、森林観測の困難さから因果関係も不明であった。

 研究グループは、北ボルネオ(マレーシア)のキナバル山の斜面に9つの森林観測サイトを設置し、気象と熱帯降雨林の植物季節に関する観測を実施。キナバル山は山頂付近まで原生林に覆われ、土壌タイプも多様。標高帯毎の植物季節と気象の関係の研究や、気象と土壌の相互作用の観察に適している。

 各サイトで得られた10年分の時系列データを解析すると、標高や土壌タイプにかかわらず、ほとんどの森林で落葉量(葉リター量)に明確な12ヶ月の周期性を認めた。これにより、局所的な気象・土壌・生物条件ではなく、大きな地域的スケールでの気象が周期性の駆動因とみられる。さらに、独自に開発した統計的手法により、熱帯収束帯の移動に伴う日平均気温の微妙な年内変動が周期性の要因と判明した。

 今回の結果から、樹木はわずかな気温変化に反応し、葉の展開や落下を同調的・周期的に生じさせることで、新葉に依存する植食性昆虫や落葉を分解する土壌微生物への影響が考えられるという。また、地球温暖化が日平均気温の年内変動に影響を及ぼすことで、熱帯降雨林にかく乱を引き起こす可能性も示唆されるとしている。

論文情報:【Journal of Ecology】Temperature is a dominant driver of distinct annual seasonality of leaf litter production ofequatorial tropical rain forests

大学ジャーナルオンライン編集部

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