名古屋大学の秋間広教授らの研究グループは、ドイツ・シャリテー・ベルリン医科大学との共同研究において、ベッド安静中に行った筋力トレーニングにより骨格筋量が維持され、筋内へ霜降り状に蓄積する脂肪(筋内脂肪)が減少することを明らかにした。
一般に骨格筋量は身体活動の低下により減少し、筋力トレーニングにより増加する。一方、筋内脂肪は加齢や肥満により増加する。これまで、身体活動の減少や筋力トレーニングとの組合せが骨格筋や筋内脂肪へ与える影響は不明だった。今回、8週間のベッド安静中に行う筋力トレーニングの有無が太ももの骨格筋量や皮下脂肪量、筋内脂肪量へ与える影響を検討した。
健康な若齢男性を対象とし、8週間のベッド安静中に週3回の筋力トレーニング(スクワット、ヒールレイズ、トゥレイズ等)を行う筋トレ群とベッド安静のみを行う対照群に分けた。両群とも実験前後に、太ももの骨格筋量と筋内脂肪量、皮下脂肪量を磁気共鳴映像法により測定。その結果、筋トレ群の骨格筋量は維持され、対照群では実験後にその量が減少した。両群の筋内脂肪量は実験後に減少したが、対照群の皮下脂肪量は増加し、筋トレ群ではその量が維持された。さらに、筋トレ群の骨格筋と筋内脂肪の量的変化に有意な相関関係が認められた。
今回、身体活動の減少や筋力トレーニングによる脂肪の適応が蓄積部位によって異なり、また、筋力トレーニングで生じる骨格筋と筋内脂肪の量的な変化に相互関係があることが示された。本研究で観察された骨格筋や脂肪の適応と類似した変化が、寝たきりの高齢者や長期宇宙滞在時の健康の維持・増進方法の確立につながるとしている。