熊本大学国際人文社会科学研究センターの小畑弘己教授は、宮崎県えびの市の役所田遺跡から出土した縄文時代後期の深鉢型土器の破片に28点のコクゾウムシ圧痕を見つけた。土器全体では250匹のコクゾウムシが粘土に塗り込まれていたと推計される。コクゾウムシが多量に混入された土器が九州で発見されたのは初めて。
熊本大学によると、コクゾウムシはオサゾウムシ科の甲虫で、貯蔵米の害虫として知られる。従来はイネの渡来とともに朝鮮半島からやってきたと考えられていたが、イネの伝播より早く日本で生息していたことが小畑教授の調査で分かっている。
コクゾウムシ圧痕が見つかった土器片は約3,600年前のもので、推計された土器全体のコクゾウムシの数は全国で発見されているコクゾウムシ圧痕がある土器の中で最も密度が高かった。
コクゾウムシの混入は縄文時代のクリ栽培とその拡散、縄文人の食物に対する精神性を表していると考えられている。今回の土器片にはコクゾウムシだけでなく、ドングリの皮なども混入されており、コクゾウムシだけを塗り込んだ他の地域と異なったマナーや意図があったとみられている。
コクゾウムシが貯蔵されたドングリを食べていたことはこれまで、想定にとどまっていた。小畑教授は今回の発見について縄文時代のコクゾウムシが貯蔵されたドングリを加害した可能性を間接的に示す証拠とみている。