東京大学の研究グループが、液体から固体状のゲルに変わる過程において、保水力(浸透圧)の変化を説明する普遍法則を発見した。
ゼラチン液が固まってゼリーになる、牛乳が固まってヨーグルトになるなどの変化に代表されるゲル化では、液体が固まるにつれて、浸透圧が大幅に減少してしまう。浸透圧は、ゲルの保水力を決定する要因であり、ゼリーやヨーグルトの表面で液体が染み出すことからわかるように、ゲル化により保水力が低下してしまうが、この保水力(浸透圧)の変化を統一的に説明する法則はこれまで知られていなかった。
今回、本研究者らは、ゲル化過程を模倣したサンプルを作り分け、長時間の測定を根気強く行うことで、ゲル化過程の浸透圧変化を正確に測定した。そして、測定結果を「普遍的状態方程式」の観点から解析した結果、ゲル化過程の浸透圧が、ゼリーやヨーグルトなどの物質の種類によらず、共通の普遍法則で説明できることを見出した。
1972年、フランスの物理学者ドゥジェンヌ博士は、鉄が磁石に変わる現象(磁性転移)とポリマー溶液の共通点を発見し、後にノーベル物理学賞を受賞した。この「ポリマー・磁性体対応」は、他にも液体ヘリウムの超流動転移や素粒子のクォーク・グルーオンの相転移など、様々な臨界現象に共通で、ポリマー溶液も、ポリマー鎖が非常に長いというマクロな性質を起源に同様の普遍性を示すことがわかっていた。
その後50年近くを経た本研究では、ドゥジェンヌ博士のアイデアがゲル化過程でも成り立つのではないかという着想からスタートしたといい、結果としてポリマー溶液だけでなくゲル化過程も同じ普遍的状態方程式に従うことが世界で初めて明らかとなった。
本研究により、ゲルの保水力をコントロールするための材料設計指針がもたらされたことから、医用材料としても応用可能な、やわらかくウェットな新規ゲル材料開発がさらに加速すると期待される。