中部大学の成田吉徳教授らは二酸化炭素を高効率で一酸化炭素のみに還元する鉄触媒を開発したと発表。有用な炭素資源としての二酸化炭素(CO2)の実用化が期待される。
CO2の還元には、これまで希少性の高い貴金属元素を含む触媒が用いられてきた。しかし、これらの触媒の活性は中程度で、多くのエネルギーを必要とし、一酸化炭素(CO)以外の物質も生成される。工業的に多くの用途があるCOのみを低エネルギーで生成し、鉄などの安価で一般的な金属を用いた高活性な触媒開発が望まれていた。
研究グループは、微生物に存在する「一酸化炭素デヒドロゲナーゼ(CODH)」という酵素の構造に着目。この酵素はCO2とCOとを相互変換し、ニッケル、鉄原子が同時に一分子のCO2に結合することにより低エネルギーで反応できる。従来の触媒は全て1個の金属イオンのみを含む構造だったが、この酵素のように2個の金属イオンを最適な距離に配置した耐久性の高い鉄ポルフィリン二量体を開発した。この鉄触媒はCO2の電気化学的還元反応が開始する過電圧が、これまで報告されている全ての錯体触媒中最低となり、触媒回転速度は極めて大きい値を示した。また、中性の溶液中でCO2の定電位還元反応を行うと、92%という高い電気効率でCOを選択的に生成した。本触媒はこのような高い触媒安定性と生成物選択性が立証された世界初の錯体触媒だ。このように中性の溶液中で高いCO2還元活性を持つ鉄錯体触媒は世界で初めてだという。
今回の発見は、太陽光を直接用いる人工光合成や、再生可能エネルギーで発電された電力による二酸化炭素還元の実用化に貢献するほか、さらに高活性な触媒開発の設計指針として役立つことが期待される。