千葉大学の綿 智理氏(大学院博士前期課程2年)と橋本卓也特任准教授(千葉ヨウ素資源イノベーションセンター)らの研究グループは、千葉で多く産出される天然資源のヨウ素を利用した新しい有機合成法の開発に成功した。創薬から基礎的な学術研究まで幅広く利用可能という。
1,2-アミノアルコールは低分子医薬品の世界売上で上位の重要な分子骨格。この分子の有機合成法に、安価で入手容易なアルケンという物質を基に合成するアルケンのアミノオキシ化があり、最も合理的な方法の一つ。この合成法にはオスミウム触媒を用いる方法が著名だが、オスミウム金属が高価で毒性があり医薬品開発に実用化されていなかった。
千葉大学では2018年に千葉ヨウ素資源イノベーションセンターを開所。千葉県が世界産出量の約4分の1を占める重要な天然資源のヨウ素の有効活用を目指した研究開発を行っている。
この知見を活かし、本研究グループはオスミウムを安価で低毒性なヨウ素に置き換える研究に取り組んできた。研究成功のカギは、独自に開発した「N-(フルオロスルホニル)カルバミン酸エステル」という、アルケンに窒素と酸素を与える新試薬。日本の研究が世界をリードしてきた有機ヨウ素触媒化学の知見を活用し、基質にその試薬を混合し、ヨウ素触媒でアルケンから欲しい構造の1,2-アミノアルコールだけを効率的に合成できた。
これにより、従来の技術では触媒の毒性が高く実用化できなかった合成法が、安価で低毒性なヨウ素触媒を用いて可能となった。医薬品に汎用される主要な構造を効率的に得られるため、今後の創薬研究において医薬候補品の簡単で迅速な合成を可能にする技術として期待される。