東京工業大学工学院情報通信系の尾形わかは教授は、国立研究開発法人情報通信研究機構と共同で、ユーザー認証・情報伝送・保存の3つのプロセスのすべてに情報理論的安全性が担保される「分散ストレージシステム」の実証実験に世界で初めて成功した。

 今回の実証実験では、安全なデータ保存を可能とする代表的な秘密分散法「Shamir(シャミア)の(k,n)しきい値秘密分散法」という方式を用いた分散ネットワークを、情報通信研究機構が運用している完全秘匿通信が可能な「量子鍵配送ネットワーク」上に実装。さらに、一つのパスワードだけで安全なユーザ認証を可能とする、東京工業大学と情報通信研究機構独自のパスワード分散プロトコルも併せて実装した。

 これにより、ユーザ認証・情報伝送・保存のプロセスにおいて、長期にわたり情報漏えいの危険のない、情報理論的に安全な分散システムの実証に世界で初めて成功したという。

 この研究の背景には、元NSA・CIA職員のスノーデン氏によるリーク情報で知られたように、インターネットで使用されている暗号の一部は、既に破られている可能性があるという現状があり、国家安全保障情報などがインターネットを行き来し保管される時代において、長期にわたり安全性を保証できる分散ストレージシステムを確立することが急務となっている。

 今後は、より大量のデータを高速に処理できるよう分散ストレージの処理能力の向上を図るとともに、ネットワークの可用性を長期にわたり検証することで、実利用に耐え得るシステムの開発を進める。さらに、開発したシステムを用いた安全なデータ中継等の新しい応用の開発も進めていくという。この研究の成果は、英国科学誌「Scientific Reports」電子版にて現地時間2016年7月1日に掲載された。

大学ジャーナルオンライン編集部

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