筑波大学システム情報系の佐久間淳教授らの研究グループは、「完全準同型暗号」を用いて、データを暗号化したまま統計解析を実現するための秘密計算手法を構築した。多様な種類のデータから記述統計、予測統計、統計的検定など様々な種類の統計解析の秘密計算を統一的に実現できる世界初の技術だ。

 データを暗号化したまま別のサーバに預けてデータ解析を行い、その計算結果だけを返してもらう方法を秘密計算という。完全準同型暗号とは、入力情報を暗号化したまま加算や乗算を可能にする暗号系の総称で、2009年に初めて実現可能な方式が提案された。しかし、大規模データにおいて実用的な計算時間と計算精度を保証しつつ様々な統計解析を実行する手法は、これまで実現できなかった。

 研究グループは、多くの統計計算が行列演算と大小比較演算で記述されることに着目。完全準同型暗号を用いた効率の良い行列演算と大小比較演算のためのアルゴリズム、および、統計解析に必要な高精度の数値演算を暗号文上で実現するための演算方法を開発した。これらの手法を組み合わせて、数値属性、順序属性、離散属性を含む数万レコードの暗号化データを対象として、標準的な記述統計や予測統計、統計的検定などの評価を数秒から10分程度で実現することに成功した。

 これまで、複数の組織が保持する個人の医療情報や遺伝情報、行動履歴、購買履歴などは、プライバシー保護のために組織間での統合が困難だった。今回開発した技術を活かすことで、プライバシーを一切損なうことなく、組織の壁を超えた統計解析や機械学習の実現が期待できるという。

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