日本学術会議が実施した高レベル放射性廃棄物をテーマにしたウェブ上の討論型世論調査で、深い地下に高レベル放射性廃棄物を埋設する地層処分への賛成が討論後に急増したことが分かった。日本学術会議は漠然とした不安が客観的なリスクと受け止められた結果とし、高レベル放射性廃棄物処分についての国民的合意の形成に有効な手法とみている。
日本学術会議によると、討議参加者はインターネット調査会社経由で集めた101人。2015年1月から募集を開始し、3月に討議実験を実施。応募時、討議用資料が配布されたあとの討議直前、討議後の3回にわたって同じ内容のアンケート調査を行った。
討議実験は1グループ6~8人で構成される14のグループに分かれ、ウェブ会議システムを活用して自由討議をする一方、グループごとに専門家に対する質問を作成、全体会で質疑した。
その結果、地層処分への賛成者は、応募時の37.2%が討議後48.5%と大幅に増加した。最終処分場受け入れについても賛成者が応募時の11.9%から23.8%に増え、反対者は63.4%から46.5%に減少した。原子力発電所の稼働については「速やかにゼロにすべき」が応募時の34.7%から討議後43.6%に増えていた。
討論型世論調査は1988年に米スタンフォード大学のフィシュキン教授が考案したもので、一般の世論調査と違い、回答者が学習するため、思い付きの回答を排除することができる。欧州ではデンマークが通貨統合、イタリアが移民政策で実施するなど既に広く採り入れられている。
日本では2009年に神奈川県が道州制の是非について実施したのを皮切りに、2012年に当時の民主党政権が2030年の電力構成と原発依存度をテーマに行い、原発に依存しない社会を作るという方向性を打ち出す材料にしている。