岡山大学大学院保健学研究科とおかやま妊娠・出産サポートセンターでは、2020年8~9月(新型コロナウイルス感染拡大第2波の中)、厚労省指定の「妊婦のCOVID-19相談窓口※」が抱える困難の実態を明らかにし対応策を考えるため、承諾の得られた相談窓口62施設、相談員230名に対して調査を実施。2021年4月、調査結果を報告書にまとめた。
調査によると、「コロナ禍における妊娠・出産」に関する相談として多かったのは、「帰省分娩(里帰り出産)の制限」「新型コロナウイルスの妊婦への影響」「立会い分娩の制限」「両親学級・母親学級の中止・延期」。特に感染多発地域(調査時の13都府県)では高率だった。
また、感染多発地域で「PCR検査」についての質問に約5割の相談員が回答できなかった。PCR検査体制は十分とは言えず、また、妊婦のPCR検査への経費補助も自治体により様々で、自治体からの情報提供は不十分な状況が見られた。現在は、さらに、変異ウイルスを確定する検査、安価な抗原検査との使い分け、さらに、妊婦へのワクチン接種に関する質問などに答える必要があり、厚労省や自治体からの情報提供が求められている。
「コロナ禍における育児」に関する相談は、「新型コロナウイルスの子どもへの影響」「乳幼児健診・予防接種受診時の感染リスク」「育児情報の入手困難」に加えて、新型コロナウイルス感染拡大に伴う「産後うつ」「子どもへの愛着不全」など、子どもへの虐待につながりやすい相談や、在宅勤務が広がる中でかえって目立つようになった「夫の育児不参加」に関する相談が比較的高率に見られた。
最も高率に「回答困難」とされたのは、「経済状況の悪化による育児費用への不安」であり、経済的支援のない自治体の相談員は困難を感じていると考えられる。
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、相談窓口が行っていた従来の相談業務も忙しくなり、「メンタルヘルス」に関する相談が最も増加。特に、感染多発地域で増加が大きかった相談内容は、「メンタルヘルス」「望まない(予期しない)妊娠」「若年妊娠」「妊娠中絶」「不妊(この時期に妊娠してよいのか等)」「緊急避妊」「児への心理的虐待」「児への身体的虐待」など。若年の女性による「望まない(予期しない)妊娠」やそれに関連する「妊娠中絶」の防止、「緊急避妊」の啓発など、相談窓口と産科医療施設等との連携も重要といえる。
※2020年5月7日、厚労省は、都道府県等に「妊婦への新型コロナウイルスに関する相談窓口」の設置を要請。現在、都道府県の窓口124か所、政令指定都市の窓口113か所、中核市の窓口57か所が指定されている。
参考:【岡山大学】コロナ禍で「妊娠や子育て」そして「望まない妊娠」の相談が増加 相談員の困難とは?厚労省指定の「妊婦のCOVID-19相談窓口」への全国調査の報告書が完成(PDF)