子どもの病院外での心停止(院外心停止)は、窒息や溺水などの呼吸障害が原因となることが多い。そのため人工呼吸を含む心肺蘇生法の実施が強く推奨されてきたが、岡山大学の研究グループは、新型コロナウイルスの流行から小児の蘇生における人工呼吸が減り、年間約10人の救えた命が失われている可能性を指摘した。
研究グループは、消防庁で管理するデータベースから2017年から2021年に全国で発生した約7,200件の小児の院外心停止事例を解析し、目撃者による蘇生法の変化と、それが死亡や後遺症に与えた影響を検証した。
その結果、人工呼吸を含めた蘇生法について、コロナ流行前の2017~2019年は31.7~35.1%実施されていたのに対し、コロナ禍となった2020年は26.2%、翌2021年は16.9%と急減していた。もともと減少傾向にあった人工呼吸の実施率がさらに約12%も低下したことになる。
胸骨圧迫だけの蘇生法を受けた小児は、30日以内の死亡や昏睡状態など不良な神経学的転帰が有意に多く、特に呼吸性心停止でその傾向が強かった。これにより、本来救えた可能性のある小児の命が年間10.7人失われたと推定している。
人工呼吸をしなくなったのは、新型コロナウイルスの感染リスクから人工呼吸を控えるよう促されていたためで、小児の心停止患者に対する人工呼吸の有効性をあらためて裏付けた格好。研究グループは感染対策を講じた安全な人工呼吸法の確立や人工呼吸補助具の開発など社会が取り組むべき課題が多いと提言している。