中部大学看護実習センターの山本司助教、生命健康科学部の伊藤守弘教授らによる予防医学研究チームが、2024年4月に中部大学を含む愛知県内4つの私立大学の学部学生9392人を対象に口腔衛生意識やオーラルケア状況についてアンケート調査を実施した。有効回答は5651人。
調査の結果、大学生全体の24.1%が「口腔状態が悪い」と回答した。特に厚生労働省の「8020運動」を知らない学生や、歯ブラシ等の道具、齲歯(虫歯)や歯周病への関心が低い学生でその傾向が強く、口腔の健康状態は知識や意識が関係していると考えられる。
また、歯科定期検診の受診率は年々低下し、1年生で30.1%、4年生では25.1%となっていた。また、歯を磨かないか毎日1回磨くだけの学生は、1年生で13.0%、4年生で17.2%と顕著に増加していた。逆に口腔状態の健康に対する興味は、1年生で69.9%、4年生は77.5%と学年を追うごとに高まっていた。
調査からは、学生が良好な口腔健康状態を保っているかどうかは、虫歯などの疾患や症状の有無、1日2回以上の歯磨き、歯ブラシなど道具への関心、定期的な歯科受診が有意に関連していることが明らかになった。一方、定期受診を妨げる要因として、治療時の痛みに対する不安や治療費の負担が挙げられた。
日本では、高校卒業後は口腔検査の義務がなく、大学の健康診断にも通常含まれていない。そのため、歯磨きや定期的な歯科受診が疎かになると、歯周病や、傷口から侵入した細菌による糖尿病や心血管疾患のリスクにつながる可能性がある。
こうした調査結果を受けて、研究チームは今後さらに実効性の高い口腔保健教育プログラムの構築と普及に向けて研究を進めていくとしている。