順天堂大学の喜古博之助手、浅岡大介教授、菅野康二准教授、松野圭准教授、宮内克己特任教授らのグループの研究で、高齢者のうつ症状が便秘症状と関連していることがわかった。

 うつ症状を含む気分障害は高齢者で多く、生活の質(QOL)を低下させるだけでなく、食欲低下などを生じ生命予後にも影響を及ぼすことが報告されている。一方、便秘症状もうつ症状と同様にQOLを低下させ、高齢者に多く認める疾患である。しかしながら、これまで高齢者のうつ症状と便秘症状との関連について詳細に検討した研究はなかった。

 そこで本研究グループは、高齢者専門大学病院である順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センターの984名の患者データを用いて、うつ症状の重症度と消化器症状関連QOLおよび便秘重症度における相関を検討した。うつ症状評価には「老年期うつ病評価尺度(GDS15、Geriatric Depression Scale-15)」、消化器症状のQOL評価には「消化器症状関連QOL問診票(出雲スケール)」、便秘重症度の評価には「便秘症状重症度(CSS、Constipation Scoring System)」といずれも国際的に広く利用されている評価スケールを用いた。

 その結果、うつ症状の重症度と全ての上~下腹部症状(逆流・胃痛・胃もたれ・便秘・下痢)のQOLの低下が関連していることを突き止めた。また、うつ症状の強さに比例して、便秘症状も重症であることがわかった。このことから、高齢者のうつ症状が便秘症状と関連していることを本邦で初めて明らかにした。

 うつ症状や便秘症状は共に高齢者の健康長寿に影響を及ぼすため、超高齢社会・人生100年時代のわが国において、健康寿命延伸を目標とした高齢者のうつ症状や便秘症状に対する予防・介入の重要性が示唆されたとしている。

論文情報:【Diagnostics】Association of Constipation and Geriatric Depressive symptoms: Cross-Sectional Analysis Using Baseline Data from the JUSTICE-TOKYO Prospective Cohort Study

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